不動産投資をはじめる前に考えて欲しいこと
別の章にて不動産投資における「失敗」の本質は、自分に適した物件を購入していないということ、言い換えれば、自分の投資目的(ゴール)に合った物件を購入していないということであると申し上げました。参考ページ:https://fives-investor.com/2021/05/04/rsim001/
ですので、ここでもう一度、あなたが不動産投資をはじめる理由や目的を明確にして欲しいのです。
目的が違えば当然戦略も違ってきます。本来は長期保有が目的だったのに、地方に掘り出し物といわれた一棟物件を勧められて予定外のローンを組むことになってしまった……という話しもよく聞きます。
それでも「転売」して利益を確保できたのならよいですが、不思議なもので一度「長期保有」と思ってしまうと、なかなかその目的を変更できないのか、もしくは欲をかいてしまうのか、転売の機会を逃してしまい、やがては入居付けもままならなくなってしまうといったケースも珍しくありません。
そうならないためにも「目的」は必ず明確にし、その目的にそぐわない物件は「絶対に買わない」というルールを決めておくとよいでしょう。
不動産投資の目的は大きく以下の4つに分けることができます。
・目的1:長期保有(安定的な副収入として)
・目的2:転売(安く買って高く売る)
・目的3:節税(減価償却で合法的に節税)
・目的4:相続対策(相続税を合法的に節税)
簡単にですが、以下より目的毎に説明していきますので是非参考にしてみてください。
目的1:長期保有(安定的な副収入として)
長期保有し、安定的に副収入を得ていくことを目的として不動産投資を行う場合、最適なのは築浅(築古でも可)の大都市圏の区分マンションです。理由としては、前述のように大都市圏においては安定的に賃貸需要が旺盛にあり数年単位で退去が出たとしても入居付けには困らない場合が多いためです。かく言う私も築20年を超える築古マンションを所有しておりますが入居付けに困ったことは1度もありません。
一方、ここで2点ほどの疑問が上がると思います。まず一点目は、「築古物件(築20年以上と想定)を長期保有して大丈夫なのか?」 そして二点目は、「新築物件ではダメなのか?」ということです。以下この2点について解説致します。
先ずは1点目について。築古物件でも分譲マンションであれば躯体も丈夫な素材で建設されており、かなりの耐久性があるといえます。
例えば、日本で最古の民間分譲マンションである「四谷コーポラス」は1956年に建てられたもので、その後60年以上に渡って現役稼働し続けました。2017年に建て替えが決まりましたが、日本の分譲マンションの耐久力を物語っていると思います。加えて、分譲マンションにおいては、共用部は管理会社によって日々メンテナンスがなされているうえ、専有部内の設備や内装はオーナーの判断で最新鋭のものに随時バリューアップできます。したがって築古であっても適切に維持管理すれば数十年に渡って稼働してくれるのです。
次に2点目についてですが、新築物件はほぼ例外なくお勧めできません。理由は、価格も賃料も購入後の下落が激しすぎるためです。
まず取得時に売主の利益がたっぷり乗せられた価格で買わされるうえ、中古物件になると価格がジェットコースターのように急落します。賃料においても、新築時は新築プレミアム賃料で貸し出すことができますが、一度退去が出た後はその他の築浅物件と同列になるため、同じ賃料で貸し出すことは難しいでしょう。
いずれにせよ、新築物件への投資を成功させるのは至難の業とるのです。
目的2:転売(安く買って高く売る)
安く買って高く売るという転売で利益を上げることを目的として不動産投資を行う場合、最適なのは地方の築古で1棟物件です。理由は、これらの条件を満たす物件は、利用価値があるにも関わらず適切な維持管理がされないままに放置されていることがあるためです。
いわゆる掘り出し物といったところです。
例えば、不動産経営に疎い地主が古いアパートを相続したものの、維持管理の仕方が分からずに物件を放置しているといったケースです。このようなケースは稀ですが、地方においては大都市圏と比べて不動産業者の目が届かないために、ダイヤの原石が眠っていることもあります。
実際に私は勤め先の会社でそのような物件を安く買ってリノベーションし、満室にして高く売るということを行っておりますが、まさに宝探しのような感覚です。
目的3:節税(減価償却で合法的に節税)
株や債権への投資にはない不動産投資特有の投資メリットとして、減価償却ができるということが挙げられます。減価償却とは、取得した物件の建物や設備が経年して古くなった分を経費として計上できるという制度です。
ここで重要な点は、実際に故障や損耗による修繕費用がかかっていなくても経費として認められているのです。
つまり、実際にはお金がかかったわけではなくても、かかったことにできるということです(もちろん合法的に)。そして、節税を目的として不動産投資を行う場合、最適なのは築古の木造1棟アパートです。
ここで重要なのは築古かつ木造であるという点です。なぜなら、減価償却による節税メリットを最大限に活かせるのがこの二つの条件を満たすときであるためです。
なお、ここで言う「築古」は築22年を超えているものを指します。この理屈をはじめから説明すると税務の専門的な話が出てきてしまう(それだけで一章書けるレベルです)ので詳細は割愛しますが、簡潔に述べると、築22年を超える木造物件を取得した場合、減価償却の制度を利用することで4年間に渡って大幅に課税所得を圧縮でき、課税される金額が少なくなるのです。
参考資料:国税庁減伽償却
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
目的4:相続対策(相続税を合法的に節税)
不動産投資、特に区分所有であるマンション購入は相続対策の大きな要になります。一般的には、現金で資産を保有している場合と比べ不動産で資産を保有している場合では、かなりの金額が節税できるといわれています。
その理由は相続税の算出方法によるものです。例えば、土地にかかる相続税は路線価をもとに算出されますが、実勢価格の7割から8割程度で設定されることが多いため、この時点で2割から3割ほどお得になっています。
一方、建物は固定資産税評価額をもとに算出されます。この固定資産税評価額は建設費の5割が相続税の課税評価額となるため、建物については約5割ほどが節税になります。
更に分譲マンションの場合であれば、持分割合に応じて相続税が算出されます。通常、分譲マンションを相続する場合は「全体額×持分割合」で算出されるため、ワンルームマンションなどのようなひとつの建物に多くの所有者がいる場合は課税評価額が低くなるのです。
更に更に、小規模宅地等の特例を活用して相続税を減税できたり、第三に賃貸する事で相続税評価額が下がり、その結果、相続税を低く抑えることができるようになります。(詳細は税理士等の専門家の方にご相談ください)
減価償却同様、相続税についても詳細は税理士等にご相談いただいた方がよいため、このくらいで割愛させていただきますが、区分所有マンションは相続対策として有効な手段でありながら一部の人以外にはまだまだ周知されていないところでもあります。
「自分は相続とは無関係だから」という人も多いのですが、実は考えている以上に身近な問題でもあったりしますので、今は必要ないと感じていても頭の片隅にでも覚えておくと近い将来に役に立つかもしれません。
但し、明らかに相続税対策ためだけのマンション購入の場合は適用されない場合もあります(例:相続税申告後すぐにマンションを売却したなど)ので、専門家に相談の上実行されることをしたおすすめします。
参考資料:国税庁相続税の計算
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
まとめ
・不動産投資を失敗しないためにはまず「投資目的」を明確にしておく
・「目的」毎に戦略はことなるため目的にそぐわない物件には手を出さない
・目的は大きく分けて4つあり、自分にあった目的をみつけることが大切