「借金問題」これまで真面目に働いていた夫が一変し借金だらけのダメ夫に(神奈川在住Oさん48歳女性の場合)

リースバック活用事例
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だれよりも堅実で合理的だった男性

「夫は本当に真面目な人だったんです。あの時までは……」

Oさん(48歳女性)とOさん夫とはかつて勤めていたリース会社の同期入社同士。社内研修などで顔を合わす機会が多く、そのうちにお互いにグチや悩みを言い合ったり励まし合ったりしている関係から、自然の成り行きで結婚することになっていたという。

「同期入社は15人ほどいましたが、彼が一番真面目なタイプでした。合理的で無駄なことが嫌いで融通の効かないところもありましたが、真面目故の行動だったのだと思います」とOさんは話す。

恋愛ならともかく結婚相手であるならば、Oさん夫は理想に近い男性だったと言う。Oさんの見立て通り、Oさん夫は会社帰りに同僚と酒場などに繰り出すこともなく無駄遣いをしない夫であった。

Oさん夫妻は結婚して2年後には女の子を、その3年後には男の子をもうけた。更に3年後には郊外の閑静な住宅街に一軒家を購入する。

「どうやら夫は一軒家を手に入れることが男性としての証のようなものと考えていたようで、夫が独身時代からコツコツと頭金を貯めていたようでした」

そのためだったのか、出会った頃からOさん夫はとても倹約家であり、付き合い始めたころから結婚するまでに奢られたことは数えられる程度しかなかったとOさんは語る。

またOさん夫のご両親も堅実なタイプであり、サラリーマン家庭でありながら貯蓄額はそれなりにあったようで、Oさん夫妻が一軒家を購入する際には、Oさん夫の預貯金とOさん夫のご両親からの援助により、4分の1程度をローンで支払うのにとどまったとのこと。

「Oさん夫と義理のご両親のおかげでローンの負担も少なく、Oさんは家計のストレスを抱えず子育てに専念できたと」Oさんは話した。

しかし、結婚して約15年後に悲劇は突然やってきた。Oさん夫のご両親がある事故で亡くなられたのである。義理のご両親との間にはなにも隔たりはなく良い関係であったというOさんであったが、悲劇は義理のご両親を亡くしたことではない。

Oさん夫のご両親には7000万ほどの資産と4000万になる保険が掛けられてあった。また、事故に巻き込まれたカタチでご両親は亡くなられたため、その賠償金としてやはり6000万近いお金が実子であるOさんに支払われたのである。

そう、Oさん夫のもとには1億7000万ほどの資産が転がり込んで来てしまったのである。

真面目な夫が会社を無断欠勤、そして失踪した

義理のご両親が亡くなられた直後、夫は酷く落ち込んでいました。45日の法要が過ぎてもどこか覇気のない夫。そのせいでどうやら会社でも重大なミスをしてしまったらしく、かつてのOさんの上司が心配してOさんに連絡をしてきた。

心配したOさんは夫に会社に休暇届けを出してゆっくり休んだら? と提案。生真面目なOさん夫は自分の勝手な都合で会社を休むことに抵抗を感じていたが、上司にもすすめられ有給消化の名目で一週間の休暇をとる事にした。

休暇中、Oさん夫はOさんに行き先を告げずどこかに出かけるようになった。フラっと出ていってしまうためOさんは心配したが夜になると家に帰ってくるため、これで夫ね気が紛れるのであれば……と考えたOさんは夫の行動を特に咎めることもなく黙認した。

休暇の一週間が過ぎて夫は会社に出勤し始めた。「もう大丈夫なの?」と心配するOさんに対して「もう大丈夫」と答えるOさん夫。それから数日後、Oさん夫の上司から電話が入った。何か夫にあったのか? と心配したOさんであったが上司からの第一声にOさんは耳を疑った。

「いつになったら出社できるようになるか確認したい」

Oさんはびっくりしたが咄嗟に「まだ体調が優れないようで」と嘘をつき、なんとかその場をしのいだ。

その日の夕方、いつも通りの時間にOさん夫は帰宅した。

「会社どうだった?」Oさんが尋ねると「いつも通りだよ」と目を伏せがちに答えるOさん夫。これではラチが明かないと考えたOさんは「今日会社から連絡があった」と、Oさん夫に伝えた。

Oさん夫は暫く黙っていたが、「そう」と素っ気なく返事をするとOさんの顔を見ることもなく寝室に入ってしまった。

次の日、Oさん夫はいつも通り同じ時間にスーツを着て家を出た。

「もしかしたら今日からまた会社に行くのかも……」そう考えたOさんは黙ってOさん夫を見送った。夜になるといつも通りの時間にOさん夫が帰宅。Oさんは黙って夫を迎えた。しかし、Oさん夫から発せられた一言は信じられないものだった

「会社を辞めてきた。もう仕事には行かない」

なぜ?どうしたの?何かあったの?心配するOさんにOさん夫は「一億以上の資産があるんだからもう働く必要なんてないだろ?」と強い口調で言い放つ。

いや、そうかもしれないけど、相続税などの税金はまだ払ってないし、子ども達はこれからまだまだお金が必要。大学だって行かせてあげたい。贅沢を望んでいる訳では無いけど仕事をやめてしまったら不安しかない。

そうOさんは訴えた。しかしOさん夫は全く聞く耳を持たない様子。当時Oさん自身は派遣社員として事務仕事をしていた。幸いにも家のローンはほとんど残っておらず、生活費だけならOさんの収入でもなんとかやっていける状態であった。しかし、子どもたちに必要なお金となると……

何日も何日もOさんはOさん夫と話し合いを試みたが、全く取り付く島がなかった。やがてOさん夫は家に帰ってこなくなってしまった。

夫が失踪し自宅のローンが支払われなくなった

Oさん夫が出ていってから2ヶ月半後、銀行から連絡が入った。ローンの支払いが滞っているとのこと。期日までに滞っている分と今月分の合わせて3ヶ月を支払わなないと一括請求か、もしくは競売対象になると説明されたOさんはあわてて必要なお金を用意した。

自宅のローンの引き落としは夫名義の通帳から引き落とされていた。しかし、支払われていないということは……急いで口座残高を確認すると残高はほとんどなかった。直ぐに夫に連絡をするもOさん夫が電話に出ることはない。

嫌な予感しかしなかったOさん。Oさん夫宛のカード会社からの利用明細を見ると極度額まで使われている。その他にも見慣れない会社からの郵便物が……開封してみると請求書があり、そこには見慣れない額の数字が書かれている。

そう、Oさん夫は一億以上のお金を手にして金銭感覚を狂わせてしまったのである。元来真面目で堅実だったOさん夫。しかし、そのタガが外れてしまったためにこれまで抑えていたものが一気に吹き出してしまったのかもしれない。

幸い自宅ローン以外にOさん自信がが連帯保証人となっていることはなかったが、そのローンの問題がままならないのである。Oさんの収入だけで家のローンを支払い続けることは可能である。しかし、そのためには子どもたちに必要なお金を削らなくてはならない。これから高校、大学とお金が必要な場面はまだまだある。ギリギリ持ちこたえられるかもしれないが肉体的にも精神的にも危うい状況だ。

幸い自宅の持ち分はOさんとOさん夫と2分の1づつ。この持ち分でなんとかならないかOさんは模索しはじめた。しかしローンの残債がまだあるためなかなかよい解決策に至らない。

「もともと金融系に勤めていたのでリースバックの利点も知っていました。上手く利用できないか考えたのですが、やはり夫との共有や残債が残っていることで活用することが出来なかったんです」Oさんは少し悔やむように話す。

OさんはOさん夫と連絡が取れるようになるのを期待してなんとか家計を1年半支え続けた。しかし、長女が高校受験をむかえると恐れていた現実に直面し始める。金銭的に不安を感じ始めてきたため役所に一人親の支援を試みたOさん、しかし書類上2人親であることや夫妻関係が破綻していることの証明ができないとの理由で断られてしまったのである。

最終的にOさんは実の両親に頼る他なかった。色々話し合った結果、両親の自宅をリースバックすることとなった。

「両親にそこまでの迷惑はかけられないから、せめて長女の入学費だけでもと考えていたんです。そしたら、この機会に自宅のローンも払ってしまえと……」Oさんはせつなそうに話す。

あれから夫とは全く連絡は取れていないというOさん。今後は失踪宣告制度を利用して自宅の所有権をすべてOさんのものにしたら、今度はOさんの自宅をリースバックして実家を買い戻したいという。

「あの時助けて貰わえなかったら、私たち親子はどうなっていたかわかりません。想像するだけでゾッとします」と語るOさん。「両親には本当に感謝しています。だから必ず両親の家は私が取り戻します」と力強く語るOさん。彼女なら必ずご両親の自宅を買い戻すことが出来るだろうと確信したのである。