「コロナ問題」コロナの影響で息子が職を失った。緊急事態宣言下で繰り広げられる親子愛(東京都在中Kさん63歳男性の場合)

リースバック活用事例
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いつもと違う誰もいない静かな春

2020年春、新型コロナウィルスにより東京では緊急事態宣言が行われ、それにより都内各地では花見大会などが軒並み中止となった。

通常なら毎年桜並木で有名な川沿いは花見客でごった返し、Kさん(63歳男性)が営む洋食店もランチ時は人があふれかえるほどの賑わいになるのだが、この年はとても静かな春となった。

「夏頃になればコロナも収束し、オリンピックが開催されて、また賑やかな日が戻ってくるだろう、そう信じていました」とKさんは語る。

しかし、状況はすぐには好転しなかった。会食などは感染の恐れがあると飲食店は営業時間を短縮を余儀なくされアルコールの提供も制限されてしまった。更に感染予防のため人々の外出の機会が激変、それにより飲食店の利用客も大きく減っていたのである。

Kさんが営む洋食店もその影響を受けた。その洋食屋はKさんの先代から50年続いている下町の老舗洋食屋であり、地元だけではなくその味を求めて遠くからも訪れるほどの人気店であった。

「ウチは妻と2人だけでやっていたし、長い付き合いのある地元の人の支援もありコロナ禍でもなんとかやれたが、息子の方はそうはいかなかったよ……」

新型コロナがもたらした厳しく非情な現実

Kさんの息子さんもKさん同様飲食店を経営していた。しかし、Kさんとは異なり従業員も雇い店自体の規模もKさんの洋食店よりも大きかったためにコロナによる影響も大きかった。

「息子の店はオープンしてまだ3年。それまで通ってくれていたお客さんの多くは在宅ワークになったり、外食を避けるようになってしまった。こんな状況でも利用してくれるような固定客もまだまだ少ない。更に彼の店は夜の営業にかなり力をいれていたから、営業時間が短縮されてアルコール類も提供できなくなってしまったら、直ぐに経営は傾いてしまったようだったよ」とKさんは残念そうに語る。

Kさんの息子さんの店は程なくして経営危機になった。持続化給付金などの補償金制度や特別貸付制度もあったが、それだけでは一時しのぎにしかならず、従業員の生活や店を維持していくことが困難であるため、傷が大きく広がる前にKさんの息子さんは苦渋の決断をした。

しかし、Kさんの息子さんには店をオープンするにあたり開業資金として銀行からの借入が1500万あるために先ずはそれを返済しなくてはならなくなった。銀行は店を閉鎖したことにより貸付の全額返済を求めてきたのである。

銀行はコロナの影響を考慮してはくれなかった。従業員を全て解雇し店を縮小させて継続していくのであれば、銀行側も対応できたのであるが、店自体を閉店させてしまったら話は違う。とはいえ、家賃や光熱費だけでも100万ほどかかってしまうため、経営を継続させていくには、現在よりも狭い場所への移転が必須となる。しかし、移転をするにもそれなりの経費はかかるため口で言うほど簡単なものでなはい。

何度か銀行と話し合いをしたが、全額返済を銀行が取り下げることはなかった。

「もう私がなんとかしてやるしかなかった。一人息子だし。彼には嫁や子どもたちもいる。いざとなったら私が隠居して50年続くこの店をやればいいんだよ」

息子のために選択した父親の決断

Kさんはリースバックを利用して息子のために一肌脱ぐことを決断した。

「もう古いし決して広い家じゃないけど立地だけはいいからね。何とかなるとは思ったよ。実際、なんとかなってホッとしたけど」と笑いながらKさんは話してくれた。

Kさんの息子さんの借入をKさんが肩代わりし、今回のことをきっかけに息子さんはKさんの店に入ることとなった。

「オヤジから代々伝わる味を引き継がなければいけないので、まだまだオヤジには店で頑張ってもらっています。オヤジからは早く隠居させろと毎日いわれてますが……」

子どものころから父親の背中を見続け育ってきたKさん親子。Kさんは先代からの店を継ぐ道を選び、Kさんの息子さんは代々続く店に追いつけるような店を作りたいと自分の店を持つ道を選んだ。

「こんな状況でも経営し続けられる父の店にはかなわなかったったことですかね。素直に自分の力を認めて一からやり直します」そう話すKさん息子の言葉は希望に満ちていた。

「色々あったけど、なんだか上手く収まったみたいでよかったよ」とKさんもまた嬉しいそうだ。

2021年になってもまだまだコロナ問題が解決するにはもう少し先になりそうな状況だが、この親子には明るい未来が待っていることだろう。

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